【final E5000 レビュー】ハイレゾ音源対応の高級イヤホン音質を評価してみました!
こんちには、佐崎司です( ´∀`)
以前のE500のレビューでチラッと触れていた、final社のE5000についてレビューします。
高性能なDAP「AP80Pro」の記事はこちら▼
小型DAPである「Shanling Q1」の記事はこちら▼
目次
final E5000について
finalはS’NEXT株式会社のオーディオブランドです。音響マニアから高い支持を受ける和製ブランドになります。
E5000は価格的にハイスペックというよりミドルスペックの上位的なイヤホンになります。
このイヤホンは音質がかなり特徴的(オンリーワン)なので、より高級なイヤホンを持っている方や同価格帯のイヤホンを持っている方にもおすすめできます。またハイレゾ音源にもしっかり対応しているのも地味に嬉しいところです。
スペック
メーカー | final |
価格 | 29,800円 (Amazon 2020年5月6日時点) |
イヤホンタイプ | カナル型 |
ドライバー | 6.4mmφダイナミック型 |
インピーダンス | 14Ω |
感度 | 93dB |
重量 | 24g |
ケーブル長 | 1.2m |
E5000の特徴
まず最初に主な特徴についてざっくりと羅列しておきます。
- フラット系
- 全体的に柔らかい、かつクリアな音質
- クラシック系と相性抜群
- 音漏れはカナル型にしては少し多め
- 遮音性はそこそこ
音質について
音質ですが、低中高域のバランスが良く非常に独特な「やわらかさ」があります。
この「やわらかさ」という言葉から音質を想像したとしても、実際にE5000の音を聞くと想像していた以上にやわらかい、というぐらいにこのイヤホンの特徴的な音です。
このイヤホンを使うと「耳に刺さる音」という現象が皆無になります。イコライザやDAC等で極端なチューニングをしても、耳が痛くなるようなキンキンの音は出ませんし、無理やりイコライザで調整しようとしても出せません。それぐらいに音の空間をやわらかく作ってくれます。
リラックスをして音楽を楽しむという用途においては非常におすすめです。
あと、特筆すべきはやはり管弦楽器系の奏で方です。このイヤホンが絶賛される特徴の一つです。一般的にはクラシックと非常に相性が良いと言われています。
特に良く「コンサートホールに居るような」といった比喩もされますが、他のフラット系のハイエンドイヤホンと聴き比べてその印象を改めて理解出来ました。
通常のフラット系のイヤホンであれば、管楽器のソロを聴くと「まるで真近で演奏しているかのよう」な管楽器の音が掠れた際の僅かな音まで鮮明に聞き取れます。
ただ、E5000の場合はその掠れた音がやや丸くなり、音も全体的に柔らかく包み込むような音色になります。この音の感覚がまさに「コンサートホールに居るような」という聴こえ方と比喩される所以です。
音の厚みについても違和感の無い自然さで奏でてくれます。
上記の理由からも、フラット系とはいえ「些細な音も正確に捉えたい」といったモニター向けでは無く、音楽を楽しむ為のイヤホンと言えます。
しかしクラシックなど聴く機会が殆ど無い私としては、ゲーム系のサントラでの使用をおすすめします。
特に「アトリエシリーズ」のような生演奏が多いタイプのサントラの鑑賞には非常に良いです。
この時は、出来れば一度はイコライザやエフェクトも全て切っての鑑賞をおススメします。「音のやわらかさ」「フラット系」という、このイヤホンの特徴を一番堪能出来ます。
とはいえ、利用者の好みによって音に少しメリハリを付けたい場合には、イコライザや各種エフェクトを利用すると良いです。E5000の愛好家には邪道と指摘されそうですが「音楽は自分の好みの音質に調整をしてナンボ」と思っておりますので。
例え強めのチューニングをしても、このイヤホン特有のやわらかさが完全に消えてしまうことは無いです。それぐらいにこのイヤホン特有の音色の良さがあります。
実際私はこのイヤホンを利用の際に、アニソン系の音楽を聴く際には音に輪郭を持たせるようにイコライザかエフェクトで少しだけ調整をしています。
メタル系のような激しく音のメリハリを要求してくるような音源については、このイヤホンの「やわらかい音」という方向性と対極する性質上、本来の曲の雰囲気を崩してしまう可能性が高く、相性が良いとは言えません。
ただ、メタル系と合わないと言ってもメタル系の曲で多用されるエレキギターとの相性が悪いということではありません。むしろ、このイヤホンでエレキギターの音を聴いた際のこのイヤホン特有の「ねっとり」としたエレキギターの音は、一度ハマると病みつきになります。
音域について
低域(低音)
低域について、ネット上では「あまり出ない」「そこそこ出る」「非情に出る」というように意見が真向に割れます。
これは人によっての好みの差か、低音が出ないと言っている利用者の装着方法に難がある(耳への挿入が甘い、等……)のでは? と疑ってしまうレベルです。
低音重視ではありませんが、少なくとも「低域は出ていない」と言われるレベルのイヤホンではないです。むしろ十分に出ていると感じるレベルです。と言いますか、これ以上低域を上げてしまうと、このイヤホンの最大の特徴の「やわらかさ」が消えてしまいます。
中域(中音)
中域もフラット系のイヤホンの特徴として問題無く鳴らしてくれます。
柔らかいからと言ってこもる音でもなく、やわらかい音色を生かしてヴォーカルを優しく伸ばして鳴らしてくれます。中域がしっかり鳴っている為、ヴォーカルが音楽に埋もれず、なおかつ全体的な柔らかさが生まれています。
どうも中域を上げだすと、一般的なフラット系のイヤホンであれば、音の情報量が多くなり悪い意味でこもりがちなのですが、そういった事も無く自然です。
また、一部の曲であるようなバックミュージックがほぼ無い箇所でのヴォーカルソロでは、ヴォーカルのやわらかい伸びが非常に良いです。
高域(高音)
高域はやわらかさを活用した伸びが聴いていて非情に心地良いです。
ただ、曲全体からメインとなる高域の音を単体で抽出して楽しむようなイヤホンではなく、クリアな高域の裏で鳴っている中域、低域の音との調和を楽しむイヤホンです。
この事を意識して音楽を聴くと、同じ曲でも今までとは全く別の物のように聴こえてきます。こういった楽しみ方が出来るのは「やわらかい」音と言いつつも決して解像度が低いわけではないという高性能なフラット型として機能している事の現れです。
音量について
E5000の特徴の一つとして「音量が取りにくい」ことがネット上でもよく挙げられます。
これは公式もこのイヤホンの特色として認めている内容で、通常のイヤホンに比べて音量が上がりにくいです。公表スペックの『インピーダンス:14Ω』という表記から、「いや、言うても14Ωだし、そこまで音量取りにくくは無いんでしょ?」と思いながら購入しました。公表スペックの『感度:93dB』の数値の意味するところを侮っていました。
「家でスマホに挿して音楽鑑賞をしながら自然と音量を上げていると、気が付いたら音量MAX手前だった」という状況になるぐらいには音量が出にくいです。
とはいえ、一般的な音楽を手元のiPhone6やipad mini4、galaxy note 9で利用している感じでは、MAXボリュームの80~90%程度で利用できています。ですので、音量が取りにくいのは確かですが、過度に不安になる心配は無いです。
それでももし、音楽によって音量が取りにくい場合には小型のアンプで音量を確保しましょう。音量が取りにくい可能性が高い曲としては、ダイナミックレンジの影響をモロに受けてしまうクラシックが挙げられます。
ただその場合は、どちらかというと「音量を上げきる事を模索するよりも周囲の騒音を静かにする方向性で音楽を聴きとりやすくした方が良いというのが個人的な意見です。この辺は個々の拘りで対処すれば良いと思います。
装着感や遮音性について
しっかりした装着をするためにも、SHURE掛けでの利用を推奨します。本体の形がシンプルな為、耳の形の個人差に依存せずフィットする点と、標準のイヤーピースの硬さも程良いです。
イヤホンは種類によっては装着が難しかったり外れやすかったりもしますが、このイヤホンではそういうことは無いです。人によっては必ずしも「耳の奥に突っ込めば良い」というものでは無いので、耳の差し込み加減やイヤーチップについては試行錯誤してみてください。
また、差し込み具合で当然遮音性も変わってきますので、その点も考慮して装着感を色々試してみましょう。イヤホンの形上、耳の中に入れやすいい為に遮音性はそこそこ高めの方です。
ベント(穴)について
唐突な話題ですが、このイヤホンのベンドについて触れておきます。
公式の断面図を用いた情報では、アコースティックチャンバー用の穴が1つあります。
画像の赤丸の部分です▼
ですが、実はもう一つ穴があります▼
ドライバーの上から光を照らすと、イヤーチップを付ける位置の少し下の部分に丸い穴があることが判ります(赤丸部)。これは案外気づきにくいです。
で、なぜ唐突にこの話題を出したかというと理由があります。
この穴、写真でもやや細かくて判りにくいですが、純正イヤーチップを極端に押し込まずに自然な範囲で付けた場合には、装着後も隠れずに穴が出ている状態になります。赤丸部から光が漏れているのが写真でもわかります。
で、ここから本題です。この穴、純正以外のイヤーチップを利用すると知らない間に塞いでしまっている場合があります。
ダイナミック型のイヤホンにとって、ベントの役割は音質と密接な関係があります。ですので、もし音質に拘りがある方は自分に合ったイヤーチップに付け替えて音質が微妙だと感じた場合、一度純正のイヤーチップに戻して再度音質を確かめてみてください。「純正のイヤーチップの方が音がクリアだ」と感じる可能性があります。
あと余談ですが、E5000では無くてE500にも同様の位置にベンドがありますが、E500の場合は構造上、イヤーチップを変えてもこの穴は塞がりません。
店頭での試聴や購入直後の注意点
店頭で試聴した際や購入直後のイヤホンの状態では、上記の内容とは全く異なる「シャリシャリした音」と「やわらかいというよりは、ぼやけた音」という印象になってしまいます。最低でも100時間以上の長期的なエージングは確実に必要なイヤホンですので、その点は要注意です。エージングしきる前に「このイヤホンは駄目だ……」などと判断してしまうのはあまりにも勿体無いです。
実際、店頭で試聴した際は「こんなものかな? 評判よりも音がパッとしない」という印象でした。ただ、お店の店員の方にデモ機のエージング度合いについて確認したところ、「殆どのイヤホンはエージングはせずにデモ機として使っている。自然のエージングに任せている」と言っていました。店頭に置いているだけのデモ機では、100時間以上のエージングが1年や2年では終わっていない可能性が高いです。ですので、店頭での試聴もあまり鵜呑みにできません。「店頭で試聴して良いと思ったイヤホンの発売日を調べると、ことごとく5年前や8年前」といった経験は有る方も多いのではないでしょうか? それはまさにエージングの差です。
更に余談ですが、エージングが十分に終わった後で、手元のE5000と店頭の試聴用のデモ機を聴き比べましたが、同一のイヤホンとは到底思えないぐらいに音が変化していました。
まれにエージングの効果について否定的・或いは消極的な方が居ますが、この(というかfinal社)イヤホンも類に漏れずエージングが露骨過ぎる程に効果が出てくるので、この点については改めて認識頂ければ幸いです。
このイヤホンを薦めにくい人
- 音にメリハリや鋭さを求める人
- 音に派手さを求める人
- ヘビメタなどの激しい曲を主に聞く人
- FPSで足音を聞きたい人
人によっては「過剰では無いか?」と思ってしまうぐらいに音が柔らかいです。
エージング前こそ音がシャリシャリしていますが、エージング後はドンシャリな音質とは無縁のネットリとしたやわらかい音質になります。なので、ドンシャリ系の音色に慣れた状態の耳でこのイヤホンを使うと、解像度の低いぼんやりとした音に感じてしまい非常にガッカリします。
ただ、前述した通り解像度はむしろ高いイヤホンなので、あえて耳を使い慣らしてE5000特有の音色を楽しんでもらいたいのが本音です。
音漏れについて
音漏れはカナル型にしては多めです。
これもネット上でもやや意見が割れます。ただ、少なくとも「他の一般的なカナル型(ベント有りのダイナミック型を含む)と比べると音漏れがある」という意見は、一致しています。ネット上での「音漏れは少ない」という意見をしている方でも、補足として「他のカナル型よりは漏れているが……」という一文が入ります。
ですので、少なくとも一般的なカナル型のイヤホンより音漏れがするという事実は誰もが認めるものです。
音漏れに関して電車での利用についても意見が割れます。これはもう個々の公衆マナーに対する認識の違い、聴く音楽のジャンルの違い、音楽の可聴レベルを満たす音量の個人差など、判断基準が曖昧過ぎるので何とも言えない部分です。
ただ、少なくともカナル型では無い一昔前までのiPhoneのイヤホンのようなタイプよりは遥かに音漏れは少ないです。
最後に
E5000はこの価格にしては余りにも特徴的でかつ、このイヤホンより高価格な物と比べたとしても、フラットかつ柔らかな音を出すという意味では限りなくオンリーワンに近いイヤホンです。
「イヤホン色々持ってるよ」という方であれば、是非そのコレクションに足すべき一品です。
あとは「クリアで柔らかくて優しい音」この言葉に興味を持った方にも是非試してほしいイヤホンです。
VR・ASMR・FPSに最適な「final VR3000」のレビュー記事はこちら▼
ディスカッション
コメント一覧
まだ、コメントがありません