【オープンイヤー(空気伝導)型イヤホン比較】Oladance、PurFree Buds、HA-NP35Tをレビューしました!
こんにちは、佐崎司です。
今回は『オープンイヤー型』や『耳を塞がない』、『ながら聴き』と呼ばれる完全ワイヤレスイヤホン製品3機種の比較をしたいと思います。
一部では『空気伝導型』などという仰々しい表現もされていますが、恐らく骨伝導型に合わせて漢字っぽい表現をした結果だと思います。今回のレビュー内では『オープンイヤー型』という表現を使用しています。
そんな『オープンイヤー型』ですが、恐らく去年の半ば程度からじわじわと認知が進んできたジャンルだと思います。
世間では長らく在宅勤務やweb会議の機会が増加し、「ずっとイヤホン(ヘッドセット)を付けてるのは耳が辛い……」という方が増えた結果でしょう。
ただ、比較的新しいジャンルのため「どういう製品があるのかわからない。どの製品が人気なのかわからない」という方も多い筈です。
今回はそういった「オープンイヤー型」のイヤホンについて、個人的にお薦めな3製品を比較していこうと思います。
目次
スペックが殆ど当てにならないオープンイヤー型
オープンイヤー型は製品の選択が難しいです。その理由は『スペック表記』と『形状による音の変化』にあります。
詳細情報の少ないスペック表記
通常のイヤホンでもスペックは判断材料として難しいのですが、オープンイヤー型の場合は難解さに拍車が掛かります。
まず、『そもそも公開されているスペックが少なすぎて、他製品との比較ができない』点です。オープンイヤー型の製品はスペック表記内容が限られている製品が多く、性能差のイメージをしにくくさせています。
形状による音の変化
オープンイヤー型は形状が重要です。
極端な話、全く同じ音質のドライバの製品が2種類あったとしても、製品の形状……すなわちドライバ部から耳に対しての距離や角度、音出力部の位置などによって、実際に聴こえる音が全く別物のレベルにまで変化します。
より細かな事を言うと、全く同じ製品であっても耳の形状・装着位置によって音質が変化するため、選択が困難だといえます。
オープンイヤー型の選択は、体感する以外に無いが……
上記理由により、オープンイヤー型を選択する際は「とりあえず実際に使ってみる」という事が一番と言わざるをえません。
とはいえ、その『体感』がなかなか手軽にできないからこそ情報収集をするわけなので、今回はそんな『体感』を軸に置き、比較的有名な3機種を比較していきます。
1.音質重視ならコレ『Oladance ウェアラブルステレオ』
ネット上などでもかなり音質の評判が良い製品が『Oladance 』です。あまりに評判が良すぎて「なーんか胡散臭いなぁ……」という気がしていました。
しかし実際に使用してみると「こりゃ評判良くて当然だな!」という製品でした。
現行機種で音楽聴くならこれが最強?
もし現時点で「当たり外れを気にせず音楽鑑賞を重視したオープンイヤー型が欲しい」という方は『Oladance 』が無難です。今回の3機種の中では唯一「なんの不便無く『音楽鑑賞が可能なレベル』である」といえます。
『Oladance 』はAndroidスマホ環境化や、一般的なBluetoothトランスミッターのみを持っている方の場合はSBC以外使用できません。トランスミッター性能としてAACに対応している製品は意外と少なく、結果としてAACはiPhoneやiPad系でしか使用環境が無い方が多いです。
そのため、必然的にSBCを使うことになるのですが、SBCも周囲の電波状況が悪くなければ結構良い音質を維持できます。
特に『Oladance』などの耳を塞がないイヤホンは電波が劣悪な環境で使用する機会が少ない(はずな)ため、SBCでもそこそこ良い音質で安定して聴けてしまいます。
そしてこの『Oladance』、一回聞けばすぐ分かりますがドライバ性能・音を鳴らすための基本性能が他の2機種に比べて明らかに良いです。詳細な比較すら無駄なぐらい圧倒的に良いです。音質を最重要として気にするなら素直に『Oladance』買ってください。
コーデックがどうとか、構造がどうとか、そういう細かい考察以前に『パッと使ってみて瞬時にわかるぐらい、ドライバの性能が純粋に良い』んです。
スピーカー部の構造とか、耳に当たる角度とか、そういうのも大事なのは確かなのですが、『Oladance』の場合は「あ~、これはそもそも構成する『部品(ドライバ)』が良いんだわ」という結論に至ります。
そりゃこのデバイス性能なら、バッテリー搭載ケースが別売りでもそこそこの価格になる、というものですよね。
イコライザ設定による音質調整が可能
『Oladance』は、iPhoneやAndroidに提供されている公式アプリを使用することで、イヤホン自体の音質を調整することが可能です。
最近の高級機種には増えてきている機能なのですが、本体の音質自体をイコライザを使用して調整するため、調整した音質を使って他のDAP(デジタルオーディオプレイヤー)やゲーム機などに接続をしても、イコライザ設定した音質を引き継いで使用可能です。
一般的なイコライザと比較すると調整範囲は限定的だと思います。ただ調整出来ない機種と比較すると利便性の高さは明らかです。
操作も快適!
イコライザと同様に、公式アプリを使用することでタッチ操作の変更が可能になっています。
完全無線イヤホン系でありがちな『手が当たるだけで操作してしまう』問題についても、通常の1回タッチ操作を無効にすれば発生しません。
2回タッチやスライドタッチに音量上げ下げや再生関連の操作を設定すれば、操作関連でのストレスが無くなり、快適に使用可能だと思います。
なまじ高音質なだけに欲が出てしまう……
正直なところ、現状で「オープンイヤー型」は「ながら作業しながらのBGM用途」というイメージが強く、自然と音質についても妥協しがちでした。
しかし『Oladance』は、他のオープンイヤー型では体感できなかった音質で音楽鑑賞が可能です。
それ故に、知らず知らずの内に通常のカナル型完全ワイヤレスの音質と比較してしまう恐れがあります(というか私は無意識で比較し始めていました)。
『Oladance』を音楽鑑賞用に一定期間使っていてある時ふと思いました。「……いや、それほど音質良いわけでも無いのでは?」と。
その時無意識に私が比較していたのは『Noble Audio FALCON PRO』でした。
そりゃあ、apt-X adaptive対応の同価格な完全ワイヤレスのインイヤー型に比べると音質が圧倒的に劣るのは当たり前です。
『オープンイヤー型』というだけで、音質においては相当のハンデを背負っているため、純粋な音楽鑑賞用の他オーディオ機器に劣るのは確かなので、その点だけは注意しましょう。
『Oladance』は『オープンイヤー型』という特殊ジャンル製品において、音質が頭一つ突出している製品であることは確かです。
バッテリー内蔵ケースは別売り
『Oladance』の特徴的な仕様の一つに、『付属ケースにはバッテリーが内蔵していない』という点があります。通常、完全ワイヤレス系の製品はケース自体にバッテリーが搭載されているのですが、『Oladance』にはその機能がありません。ケース自体に充電機能が欲しい場合には、別途バッテリー搭載の充電ケースを購入する必要があります。
『Oladance』の標準ケースはあくまで「充電スタンドを兼ねたケース」というだけで、ケース自体に電源ケーブルを接続した状態になって初めて、中に入れているイヤホンが充電されます。
追加のケースを購入しないと持ち運びが不便かと思いきや、イヤホン単体でも公式情報で16時間使用可能ということなので全く問題無いです。あと、いざとなれば標準ケースを別途モバイルバッテリーと接続しても外で充電できます。
装着感は若干微妙かも……?
耳の上に載せているだけなので若干安定しない印象です。装着した状態で下を向いたり走ったりした場合に、ぽろっと落ちるという人がいそうに思えます。
ただフィット感の甘さは、裏を返せば『耳への負担が少ない』とも言えますので、この辺は完全に好みでしょう。特に動く状態ではない場合には耳への負担の少なさはメリット足りえます。またフィット感が欲しい人は付属もしくは別売りのシリコンカバーを装着すれば若干ましになります。
6時間ほど付けっぱなしで作業しましたがほとんど痛くならなかったので耳への負担は少ないと言えます。
ホワイトノイズ問題
『Oladance』で良く指摘される問題の一つに「ホワイトノイズが気になる」というものがあります。
ホワイトノイズとは、特に無音の時に良く聴こえる「サー……」とかそんな感じのあの音です。
このホワイトノイズ問題は、高級な有線イヤホンにおいてもインピーダンス(Ω)が低い機種では発生するため、『Oladance』のドライバ性能が悪いというわけではありません。
有線イヤホンであれば、対策としてケーブルや再生機器からの出力に対し追加で抵抗(Ω)を挟む手法での対策も可能です。しかし完全ワイヤレスの場合はそういったホワイトノイズ対策ができません。そのため、ホワイトノイズが気になる方は『Oladance』については注意した方が良いです。
周りでPCの冷却ファンやエアコンなど何かしら音があると気にならない程度ではあります。ただし深夜の寝静まった他に音の無い環境では確実に聞こえます。オンラインゲームのボイチャで使う分にはゲーム音が鳴っているので問題ありませんが、動画鑑賞やリモートワークなどの静かな場面ではホワイトノイズが聞こえます。
2.短所を許容できれば高コスパの『HA-NP35T』
『HA-NP35T』は『Victor』の製品です。『Victor』と言えば懐かしの犬のロゴではないでしょうか?▼
何となくこのロゴは見ていると安心しますね……
音質は自体は価格を考えると抜群に良い
『HA-NP35T』最大のポイントは『価格に似合わないクリアな音質』にあります。
もちろん「低価格な製品にしては」という意味のため過度な期待は禁物ですが、「この価格にしては他社製品と比較して遥かに高音質」です。
もしオープンイヤー型として最初に『HA-NP35T』を使い始めた方が、「オープンイヤー型は、この価格でこれぐらいの音質なのかぁ」と理解してしまっていると、以降のステップアップには要注意です。
この『HA-NP35T』の音傾向(特に音のクリアさ)を好ましいと思った方の場合、より良い音質のものを求める場合は最低でも実売価格2万円以上の上位製品を入手しなければ満足できないと思います。というか私はまさにその状況になりました……。
『HA-NP35T』、製品の『クセ』さえ許容できれば本当にコスパが良いです。
価格に似合わぬ高域表現
本音を言うと、購入前は『オープンイヤー型でこの価格』となると、あくまで『作業BGM用』と割り切る程度の音質なんだろうなぁ、と思っていました。
しかし実際に使用してみると、思いのほか高域が綺麗にかつクリアに伸びてくれます。確かに価格相応のドライバ性能から感じる安っぽさもあるのですが、現状のオープンイヤー型の製品事情を考えると、価格に似合わぬ高音質だと感じました。
低音量・重低音域の弱さに注意
この『HA-NP35T』において「唯一にして最大の弱点」と言うべきところは「最大音量が小さい」という点にあります。
どのぐらい小さいかというと、スマホに接続した状態で音楽を聴くために音量を最大まで上げても「あれ? 音小さい?」と感じる程度には小さいです。
そのため、通常の使用方法ではもちろん電車の中ではほぼ聴こえない(周囲の音にかき消される)と思って良いです。もっとも電車内でオープンイヤー型で音楽を聴こうとするのが無茶なのですが、例えば「周囲に誰も電車に乗ってる人が居ないから、思い切ってもうちょっと音量上げちゃえ!」などと考えても『HA-NP35T』の場合は、純粋なスマホの音量設定だけでは上げることができません。
静かな場所で音楽を聴こうとした場合でも、「もうちょっと音量上げたいなぁ……」と感じる方は多いと思います。それぐらいにこの『HA-NP35T』は音量を確保しづらいです。
また、重低音域についてもかなり弱いです。そもそもオープンイヤー型の時点で重低音が苦手なのは明白なのですが、オープンイヤー型カテゴリ内においても重低音が弱めな機種と言えるでしょう。
ただ音が小さいといっても人それぞれで、普段あまり音楽を聴かない友人に使ってもらったところ部屋の中であれば最大音量の60%程度で十分とのことでした。なので過度に心配する必要はないです。
対策はイコライザやアンプ使用
個人的に低音量や重低音対策として最も推したいのは、パソコンでの使用時にイコライザなどで音量を底上げしてしまうことです。
そうすることで「そこそこ大きい音まで調整できたかも?」という状況になります。一般的な音量で聴く方であれば、この方法で問題無しです。『音楽鑑賞中に周囲から声を掛けられても殆ど聴き取れない』ぐらいの音量までには上げることが可能になります。
それでも大音量とまではいかないので、普段から相当な大音量で音楽を聴いていると自覚している方は不満が残るかもしれません。まぁ……『耳には優しいデバイス』と言うことで……
スマホでも音楽アプリでイコライザを設定したり、機種によってはスマホの標準機能でイコライザが搭載されているものもあります。そういったもので全体の音量を調整してみましょう。
イコライザで音量を無理に上げ過ぎると音が歪んでしまう(不自然に波打つような音になってしまう)ので、そこは実際に音楽を聴きながら設定を調整してみましょう。スマホのイコライザ系のアプリにも色々種類が存在し、音の歪み易さにも差があります。その点も加味して試してみると良いでしょう。
音量同様に、重低音の強さもイコライザで補強をすると良い感じに「あっさりとした丁寧な重低音」として楽しめます。完全な重低音好きは満足できないレベルですが、高域重視の方やフラット系で満足できる方であれば『丁寧な低域表現』として音楽鑑賞にも問題無いレベルで使用可能になります。
装着感と安定感も良い
『HA-NP35T』はオープンイヤー系の中でも装着感と安定感が優秀だと感じました。
個人的には眼鏡と併用しても、作業に没頭しだすと長時間つけていても気になりません。ただ、作業後に外した際には耳が装着状態から解放されたような感覚にはなります。
『耳に掛かる箇所が多少の柔軟性をもっているものの、全体的に太い』というための特徴かと思います▼
また、デバイスのスピーカー部の位置が万遍ないためか、装着位置によって音質が極端に変化しないことも良い特徴の一つです。
オープンイヤー型は、どの製品も耳への装着位置(細かい角度や装着加減)によって音質が可変してしまうことが多い印象でしたが、『HA-NP35T』の場合はあまり装着に気を使わなくても音質が一定に保たれています。
作業BGMにも良し
通常の使用方法では音量が大きく取れない+低音域が弱くスッキリめの音質のため、作業BGM適性が高いです。
バッテリーの持ちについても、作業の合間の休憩や食事タイミングで充電をすれば丁度良い感じに使用できます。
価格を考慮しても『手頃な価格で作業BGM用のオープンイヤー型イヤホン』として大変優秀です。
3.作業のお供適正に全振り『PurFree Buds』
『PurFree Buds』は日本での発売タイミングとしては一番後発の製品です。
今回の3点の中では唯一『apt-X』に対応している機種でもあります。比較機種の中では『色々な意味での平均的な性能』というのが正直な感想です。
中間性能というか、平均的と言うか……普通過ぎるというか……うん、普通……。
音質は……普通……
率直な本音を言うと、『音質の綺麗さ・透明感』については明白に『Oladance 』以下です。『音楽を純粋に楽しみたい』という場合には素直に『Oladance 』を購入しましょう。
また、『中高域(特に1k~4k周辺)の音が全体的に荒い』と感じました。なんというか、高域重視の音楽に没入させる気が無いような……。どれだけイコライザをはじめとする音響効果で色々調整をしても「ちょっとリッチなFMラジオ」の域を超えない印象です。
この機種の利点としては、低域については雑さや変なザラザラ感も少なく綺麗に鳴ってくれます。
もしかすると低域重視の方の場合は、音楽鑑賞においても『HA-NP35T』よりも満足度が高いかもしれません。
後述もしますが、なまじ音量は取れてしまうせいか、デバイス性能が音量に負けてしまって逆効果になっているように感じました。特に高域の音が割れが目立つ印象があり、音の伸びが心地良さに欠けます。
そのため「開放型イヤホンを活かして、中高域の伸びのあるクリアな音質を耳を塞がずに堪能したい!」という方には正直向かないです。その場合はコスパ重視の『HA-NP35T』で割り切るか、『Oladance』級の性能のもの、それに類する価格・性能のものを選びましょう。
『HA-NP35T』の上位機種として『PurFree Buds』を入手してしまうと、その後で『Oladance』の音質を知ると絶望できます(私は絶望しました)。
音量はしっかりとれる
『PurFree Buds』の音量自体は『HA-NP35T』よりは各段に取りやすいです。「もう周囲の音聴く気、無いだろ……」というぐらい音量は上げれます。そのため、音量確保に困ることは無いです。
反面、音量が思うがままに調整可能なため、周囲への音漏れが発生している事は認識しておきましょう。
『PurFree Buds』は構造(スピーカーの配置)上、結構音漏れがしやすい印象です。
また、音量調整が本体下部の物理ボタンで可能なため、完全ワイヤレス機種でありがちな音量上げ下げの誤動作率も少ない点は好感が持てます▼
低音域の表現もそこそこ
低音域についても『HA-NP35T』に比べると『PurFree Buds』の方が格段に取りやすいです。
高域を重視しない低音域好きの方であれば満足度が高いかもしれません。
ただ『濃厚な重低音!』とか、そういう音楽表現の豊かさまでには到達していない印象です。あくまで「低域もそこそこちゃんと音出てるよ」という程度だと認識しておきましょう。
音の全体的なクリアさは……普通……
上記でも少し触れましたが、『HA-NP35T』と比較をすると、音の透明感というかクリアさに少々がっかりしてしまうレベルです。
『HA-NP35T』は『PurFree Buds』と比べると低域が格段に弱い特徴の結果だとは思うのですが、『PurFree Buds』をイコライザでどれだけ音量調整をしても『HA-NP35T』のような聴き心地の良い『クリアなサウンド』に到達できませんでした。
ただ、念のため補足をしておくと、『クリアなサウンド』に到達していないとはいえ『普通』としてのクオリティは十分満たしています。
この『普通』というのも結構重要で、安価なオープンイヤー系では全くその『普通』すら満たせていないものばかりです。
その点『PurFree Buds』は『高水準な普通』としては頑張った性能ともいえます。『そこそこの音質』という意味では音全体のバランスに破綻が少ないです。
作業BGM適性はかなり高い
音質が『普通』であることが意外な形で恩恵として現れます。
作業用BGMとして丁度良いのです。
なまじ音質が良いと、作業時に音楽を流している時に思わず聴き入ってそちらに意識がもっていかれてしまうことがあります。特にヴォーカル曲になるとその可能性は顕著化しがちです。
しかしこの『PurFree Buds』の場合は音質が安定して『普通』のため、ヴォーカル系の音楽を聴きながらでも、なんとなくBGMとして聴き流して作業に集中できます。
『音楽鑑賞用途』として価格も考慮すると「完全にダメなのでは……?」という気がするのですが、オープンイヤー系に大勢の人が求めていそうな本来の用途を考えると「むしろこの『普通』の音質が適正なのか……?」と思えてきます。
またフィット感については3製品の中で一番良く、多少体を動かしても落ちることはなかったです。
apt-Xを活かした活用は可能か?
今回レビューしている他の機種との明確な利点と言えば『PurFree Buds』はapt-Xに対応しているということです。
apt-Xの性質として「AACやSBCよりは遅延が少なく・音質も良く・接続の安定度も高め」という点にあります。
コーデックの音質については諸説あるのでここでは割愛します。
ただ、ここまでの内容の通り、正直なところ『PurFree Buds』はデバイス性能としての音質が特別良いとは言えません。
「apt-X対応、宝の持ち腐れでは……?」
そんな不安を解消しようと色々考えてみました。
『遅延性能』を活か……す?
「遅延の差で明確に用途が増えるなら、それはこの機種の完全なアドバンテージになるはず!」ということです。
とはいえ、リズムゲーム(音ゲー)ではapt-Xでは遅延が酷過ぎなせいで、打鍵音ありでは全く役に立ちません。
というわけで、試しにAndroidで原神を軽く動かしてみました。
なんというか……やっぱりapt-Xではアクションゲームもダメですね。
『攻撃モーションで斬撃が終わって、ワンテンポ後に斬撃効果音が鳴る』という感じで、アクションゲーム特有の爽快感も阻害してくるため、とてもこの状態でプレイしたくないです。
ただ、コマンド選択型のようなゲームであれば、まぁギリギリアリかと思います。とはいえ、そういうゲームだと今度は割り切ってプレイしてしまえばSBCなどでもできてしまうので、それはそれで微妙な利点と言えそうです。
せめてapt-X LLやadaptiveに対応していれば、明確な利点になったのですが……。
動画を見るにしても、「開放型のイヤホンで見れる空間であれば、いっそちゃんと遅延のないイヤホンで、周りを気にせず見たい」というのが本音ですね。
もっとも、このあたりの感覚は人によりけりなので、私と同じ考えに至らない人も居ると思います。
しかし少なくとも、私はこの製品に『apt-X程度の遅延性能』であることを活かした使用法が浮かびませんでした。
『接続の安定性』を活か……す場がない……
次にapt-Xの接続の安定性ですが、これを活かすということはすなわち『屋外(自宅以外)で使う』前提になるはずです。
……ぶっちゃけ活かす場が無いですねぇ……。
SBCよりは良いとはいえ、apt-Xもそこまで接続の安定性が強いというわけでもありません。
音質以外でapt-Xを活かせる場が無いが……
考えれば考えるほど『オープンイヤー型』というジャンルにおいて、apt-Xの優位性がなかなか無いです。
優位性の恩恵を確実に得るためには『それ相応のドライバを搭載した、それなりに高価で高音質な製品』である必要があります。
あるいはapt-X adaptive,apt-X LLなどに対応していれば、一気に利用の幅が広がったのですが、その点は残念なところです。
しかもapt-Xの音質に関する優位性についても……、使えば使うほど「この程度のドライバ性能なら、別にSBC接続でも良いかなぁ……」という気分になってきます。
例えば、最初はFireHD8で作業用音楽を垂れ流す時にapt-Xのトランスミッターを使用していた(FireHD8はapt-Xに対応していないため)のですが、次第に面倒臭くなってきてFireHD8の本体に直接SBC接続をして使うようになってきました。
バッテリー保ちの判断基準について
今回レビューしている製品のように、最近の完全ワイヤレスは公式情報ではバッテリーが7時間保つとのことです。
実際に以下のようなサイクルで使ってみてもバッテリー消費的に問題ありませんでした。
09:30~ 使用開始(仕事中のBGMとして再生)
12:00~ 使用停止(昼休憩中はケースで充電)
13:00~ 使用再開(仕事中のBGMとして再生)
18:00~ 使用停止(ケースで充電しながらケース自体も充電)
20:00~ 使用再開(作業時のBGMとして再生)
25:00~ 就寝(ケースで充電)
この製品に限らないですが、基本的に「仕事中・作業時は付けて、その他の時間は外す」というサイクルであれば、電池が切れてしまうストレスは無いです。
もし、一定期間以上愛用し続けてバッテリー寿命が怪しいと感じ始めた場合には、作業合間の小休止などに短時間充電をするのもアリだと思います。
音漏れにもご注意を……
オープンイヤー型は耳に直接差し込まない割には音漏れは少ないです。
ただ、あくまで『少ない』だけなので、音漏れ自体は存在することに注意しましょう。
音漏れ少ない:『HA-NP35T』
音漏れ多少ある:『Oladance』
油断すると音漏れヤバい:『PurFree Buds』
という印象です。
もっとも、どの機種も「音量を上げるとそれ相応に音は漏れる」という認識をしておくことが良いでしょう。
骨伝導タイプとの比較(Shokz OpenMove)
明らかに他の3つとは経路が異なりますが参考程度に……。
やはり音質は『骨伝導』ということで全体的に丸みを帯びてこもり気味です。それでもOpenMoveの音質は骨伝導系にしては全体的に音が安定していました。
『電波状況がすごく良いけど、音の籠ったAMラジオ』とでも言うべきでしょうか?完全に用途を割り切れば便利なアイテムだと思います。音質(特に音のクリアさと低域・高域の出力)は明らかに今回の他3種には劣りました。
この辺は骨伝導なので仕方が無いという感じですね。
骨伝導も使いどころや好みの差によって便利な製品なので、用途によって使い分けると良いでしょう。
ただ、骨伝導に音楽鑑賞の音質を求めるのはダメです。そこは『骨伝導だし』と割り切りが必要ですね。
まとめ
今回のレビュー内容をまとめると以下のような感じになります。
オールラウンドでコスパ重視(音量は要工夫):『HA-NP35T』
音楽鑑賞で最強(ホワイトノイズは鳴る):『Oladance』
音量が取れて作業BGMに良い(音漏れでかい):『PurFree Buds』
どれも状況や目的に合わせれば、値段相応・それ以上の働きをしてくれる製品だと思います。
音量問題が解決できる(or許容できる)方であれば、『HA-NP35T』はかなりお薦めしやすい製品です。
何も考えずに「とりあえず『ハズレ』を引きたくない」という方は、『Oladance』が無難です。コレを購入してハズレと感じた場合には「そもそも自分にとっては『オープンイヤー型』というカテゴリ自体がハズレだった」と捉えるべきでしょう。ただホワイトノイズが気になる人は注意が必要です。
周囲への騒音を最小限に留めつつ、耳への負担が少ないオープンイヤー型については、今後も良い製品が出ればと期待しています。
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