【GAOMON PD1220 レビュー】柔らかい描き心地で高画質!HDMI搭載でマルチメディアに使える液タブです!
こんちには、佐崎司です。
今回はコンパクトサイズの液晶タブレットである『GAOMON PD1220』のレビューをします。
『液タブ』と略される今回の製品ですが、同サイズの液晶タブレットは過去にも『GAOMON PD1161』という製品が同メーカーから発売されています。
『PD1161』はネット上でも評価が高い製品ですが、今回の『GAOMON PD1220』は前機種をより洗練させた製品といえます。
今回はGAOMON様よりご提供いただいたので、じっくりと使ってみた感想をまとめました。
板タブレットである「GAOMON M1220」のレビュー記事はこちら▼
目次
GAOMON PD1220とは
GAOMON(ガオモン)は中国の板タブレットや液晶タブレットなどを扱っている企業になります。
PD1220は板状のタブレットに画面を表示してお絵描きする液晶タブレットになります。ちなみにタブレット自体に画面を表示しない機種は板タブレットと呼ばれます。
カラーバリエーションは「黒に近い灰色」と「浅緋色」の2色展開になります。
PD1220はパソコンだけではなくAndroid端末でも使用可能な点はもちろん、イヤホン端子がある点や、Mini HDMI端子も備えています。
これらを活用することでコンパクトなディスプレイとしても利用できます。
• 柔らかい描き心地のペン性能で疲れにくい
• 画質が綺麗で色合いの調整も手軽にできる
• コンパクトかつ軽量
• Mini HDMI端子があり、純粋な小型ディスプレイとしても活用できる
• イヤホン端子がある
スペック
メーカー | GAOMON |
価格 | 29,999円 Amazon 2021年5月8日時点 |
画面サイズ(種類) | 11.6 インチ(IPS LCD) |
画面加工 | フルラミネーションディスプレイ(アンチグレアフィルム貼付済) |
画面解像度 | 1920 x 1080 (16:9) |
色域 | 86%(NTSC) |
表示色 | 16.7M(8bit) |
コントラスト | 1000:1 |
応答速度 | 25ms |
輝度 | 220cd/㎡ |
視野角 | 178° |
寸法 | 304 x 206 x 13.4mm |
作業範囲 | 256.3 x 144.2mm |
重量 | 0.74Kg |
ペン名称 | AP50 Pen (充電不要タイプ) |
ペン精度 | ±0.5mm (Center) \ ±3mm(Corner) |
傾き検知角度 | ±60° |
筆圧レベル | 8192 レベル |
報告率 | ≥220PPS |
読取解像度 | 5080 LPI |
インタフェース | Mini HDMI、Type-C*2 |
対応システム | Windows7 / 8 / 8.1以降、Mac OS 10.12以降、TNTモードをサポートするAndoridデバイス。 |
ACアダプタ | 5V2A |
カタログスペックは全体的に高水準
PD1220について、スペック情報から確認できる性能は問題無いです。
どの数値もハイスペック帯の水準を満たしているため、特に不満点はみつかりません。
筆圧レベルが8192レベルである点、傾き検知に対応している点、読取解像度が5080LPIである点、ペン性能についても問題ない水準です。
CG作成用途にもおすすめな色域
色域とは「ディスプレイが表現できる色の範囲の指標」です。簡潔に説明すると「値が高い程、綺麗で正確な色表現ができる」ということです。
特にPD1220は色域が86%(NTSC)であるため、色表現が安価な液タブよりもCG作成に適しているといえます。
低価格の液タブは、色域が72%(NTSC)のものが多いです。72%でもCG作品を作る事自体は可能ですが、他の一般的な液晶ディスプレイと同じような色合いに調整することができないです。
液タブの色調整が異なると、正しい設定にした液晶ディスプレイと比較すると色合いが全く異なってきます。
上記のような理由からも「描いたCGを他人に公開する予定がある、印刷物の作成を目的にしているなら色域は86%(NTSC)は欲しい」というのが、パソコンでお絵描きをする人達の一般的な考え方になります。
色域が72%(NTSC)の液タブを使用している人は現在でも結構おられますが、そういった方達は別途ディスプレイにも表示して色調整をしている事が多いです(というか私も普段はそうです)。
他社製品によっては色域に『120%sRGB』や『Adobe RGB92%』といった感じの表記があります。評価の基準が異なる為の数値差と考えると良いです。上記の数値はNTSC基準で考えると86~88%でおおよそ同じぐらいの色域となります。
性能を基準に考えると高くはない値段設定
価格については、他の低価格な同サイズの液タブに比べてやや割高感な印象を受けてしまう方もいるかもしれません。ただスペックとコンパクトさ・汎用性の高さを考えると、それに見合った性能であることがわかります。
また、純粋な描き味についても好印象でした(詳細は別項目で追記します)
Windows, Mac, Androidで使用可能
PD1220はパソコン以外にも、Android端末との接続にも対応しています。ただ、対応機種でなければ液タブとして利用できない点は注意です。
この件については以下で詳しく説明していきます。
開封
▼それでは早速開封していきます。
箱裏には基本的なスペックやPCとの接続方法のイメージ画像が記載されています。
GAOMONの公式サイトにてドライバをダウンロードし、イメージ画像の通りにPCに接続すれば問題なく使用可能です。
▼箱を開封するとこんな感じです。上下や側面もしっかり保護された状態で入っています。
▼液タブ以外の内容物は以下の通りです。
- PD1220液晶タブレット
- デジタルペン
- HDMIケーブル (HDMI to mini HDMI)
- USB-A to Type-C & 電源ケーブル
- 折りたたみ式レザースタンド
- ペンホルダー (8個の替え芯含む)
- グローブ
- クリーニング用の布
- クイックスタートガイド
- ACアダプター(5V 2A)
液タブとしての定番のアイテムは一通り入っているような印象ですが、ACアダプタもちゃんと付属している点は嬉しいです。メーカーによってはACアダプタが付属していないものもあります。
▼今回の付属品で、他の液タブと異なる印象を受けたのはケーブルです。
PD1220には映像情報を受け取る為の『Mini HDMI』の端子が存在するため、Mini HDMIに対応したケーブルが付属しています。Mini HDMIのケーブルを持っている人はそこまで多くないと思いますので、無くしたり断線させたりしないように大切に取り扱いましょう。
なおパソコン側への接続端子は、通常のHDMIになっています。
▼そしてこちらが付属しているもう一つのケーブルです。
一番左のType-C端子をPD1220に挿し、真ん中の赤色USB端子は付属のACアダプタへ、右の黒色USB端子をパソコンへ接続して使用します。
▼ペン&ペン立てです。
ペンのグリップ部分にはボタンが2つ存在します。それぞれに機能割り当てが可能です。
デザインは全体的にシンプルな印象です。
▼ペン先はこんな感じです。
GAOMONのペン先は、この液タブに限らずしっかりしたサイズという印象です。
純正の替え芯も安めでコスパが良いのもポイントだと思います。
▼ペンに関する余談ですが、ペン形状がGAOMONの板タブ(別製品)で使われているものと全く変わりません。
画像の上のペンが板タブ(M1220)用、下のペンが今回の液タブ(PD1220)用のものです。液タブ用ペン方が、色合いは全体的に少し薄くなっています。両者のペンには互換性はありません。
もし両方を持っている場合には、持ち運び時には間違えないように注意が必要です。
▼次はペン立て。裏返すとペン先を抜くための穴があります。
▼ペン立ては回転させることで中に交換用の芯が8本格納されています。
▼ペン立てがあると、気が付いたときにペンがどこにあるか分からなくなる心配も無いので便利です。
▼レザースタンドが付属していました。裏面の上部が粘着質になっていて、貼り付けて使用します。
持ち運ぶ頻度が高い人であれば、手軽に画面を守れてスタンドにもなるので便利だと思います。ただ、粘着質で貼るタイプなので手軽に着脱は出来ません。持ち運びの頻度などを考慮して貼るかどうかは判断しましょう。
マグネットでくっ付くような仕組みでもないので、磁気を気にする心配はありません。
▼液タブ本体です。
表面に凹凸が無く、非常にすっきりとしたデザインになっています。最初からアンチグレア(反射防止)フィルムも貼ってあります。ペン先が滑り過ぎない程度のサラサラな触り心地です。
描き味も良く、それでいてペン先を極端に摩擦ですり減らすような事もありません。
▼また、開封直後はアンチグレアフィルムの更に上にも、輸送時の保護用のフィルムも貼っています。一番上に貼っているツルツルのフィルムは外しちゃいましょう
▼裏面もシンプルです。
四隅には滑り止めが付いています。全体的に角ばった箇所も無い為、付属の折り畳み式のスタンドを付けてカバンに放り込んでも、他のものにぶつかって傷つけたりもしないと思います。
▼左側面の上部には、3.5mmイヤホンジャックとサムホイールスイッチがあります。
イヤホンジャックにイヤホンなどを挿すことで、液タブを接続しているパソコンやAndroid端末で音楽を流した際に手軽に手元で聴くことができます。
サムホイールスイッチについては後から別途説明します。
▼こちらは画面上部の電源ボタン。電源のオンオフ以外にも、液タブの設定画面での操作にも利用します。
▼右上部には簡単な製品情報とシリアルナンバーが記載されています。
『INPUT:5V 2A』である事は頭の片隅に置いておきましょう。
純正のACアダプタを使用すれば問題無いですが、持ち運びなど兼ね合いやバスパワーでの運用の際には電力を適切に確保できているか注意が必要です。
▼本体右側の端子です。
左側と中央の2つはType-C端子、右側はMini HDMI端子です。
差し込み口に凹凸が無い為、他メーカー製品でありがちな「専用ケーブル以外は使用できない」といったこともありません。
適切な規格のケーブルが用意できれば、自分の好きなようにアダプタやケーブルの長さやを調整することも可能です。あくまで自己責任での実施にはなりますが、ケーブルは持ち運びの便利さやデスク周りの快適さにもつながります。
対応しているAndroid端末について
公式情報では対応デバイスについて『TNTモードをサポートするAndroidデバイス』との記述があります。
『TNTモード』は、ほとんどの方が聞き慣れないものだと思います。『TNTモード』はいわゆるデスクトップモードの事のようです。
公式の製品マニュアルの『1.3接続』の項目には、『Android携帯電話が「Dex」、「Desktop」、「TNT」モードをサポートしていることを確認してください』という表記も確認できました。
DEXやデスクトップモードの対応機種でも問題無いようです。なお、手持ちのAndroidスマートフォンの中では『HTC-U11』と『Galaxy note 9』での動作確認は出来ました。HTC-U11の場合はミラーリングでの動作が前提であることと、スマホ側の性能がやや心もとない点は注意です。
グローバル版(海外版)公式サイトを見ると、厳密な対応機種が記載されていました。
Huawei | P20/P20 Pro/P20 RS P30/P30 Pro P40/P40 Pro/P40 Pro Plus Mate 10/10 Pro Mate 20/20 Pro/20 X Mate 30/30 Pro |
Honor | Note 10 V20 30Pro/30Pro+ |
Samsung | Galaxy Note 8/9 Galaxy Note 10/10+/10+5G Galaxy S8/S8+ Galaxy S9/S9+ Galaxy S10/S10+/S10e Galaxy S20/S20+/S20 Ultra Galaxy Fold Galaxy A90 5G Galaxy Tab S4/S5e/S6 |
上記の対応機種一覧からも、『Samsung系のDEXに対応している or Huawei系のデスクトップモードに対応している機種 or それに類する性能も持つもの』ということで問題無さそうですね。
機種対応表は、製品を検討している日本ユーザーが見る場所に記載があった方が良いと思いました。
イヤホンジャックとサムホイールスイッチが便利
サムホイールスイッチとは画像右側のスイッチのことです。このスイッチが丁度良いところにあり、操作感が抜群です。このスイッチには代表的な機能が2つ備わっています。
それは『ディスプレイの明るさ調整』と『3.5mmジャックのボリューム調整』の機能です。
イヤホンジャックに何も挿していない場合は、スイッチを左右にスライドすることでディスプレイの明るさ調整が可能です。
イヤホンやヘッドセットなどが挿入されている場合には、ボリューム調整が可能になります。
▼PD1220のイヤホンジャックを使って音楽を聴いている状態で明るさを変更したくなった場合には、サムホイールスイッチを押すことで液タブ自体の各種設定を開くことが可能です。
▼色調整についても基本的な機能が備わっています。
パソコンが無い方でも手軽に色が調整可能なのは非常に良いです。
長時間絵を描くような場合、線画などのモノクロ作業時には青色を落として『ブルーライトカット』のように青みを落として使うこともできます。
▼色合いをプリセットでも変更可能です。液タブというよりも完全に液晶ディスプレイの設定ですね。
▼液晶画面の設定は、初期状態では英語表示になっています。そのため、OSD設定で日本語に変更すると使いやすいです。
パソコンやAndroidとの接続方法について
公式の説明書にて提示されている接続方法は3パターンです。
①付属のケーブル2種を使ってパソコンに接続する
この方法で使用する人が一番多く、動作も安定するためおすすめです。デバイスの相性などによる不確定要素もほとんどなく、電源の供給面でも心配がありません。PD1220の付属品だけで接続してすぐに使える点も良いと思います。
なにか特別な理由が無い限りは①の使用方法をおすすめします。
公式情報外の利用法ですが、HDMIのケーブルをあえて挿さずに、付属のUSBケーブルのみを利用してパソコンとアダプタに接続し電源を入れることで、板タブのように利用する事も可能でした。
イメージ的には「画像情報が送信されてきていない真っ黒な画面上にペン操作だけをしている」ようなものなので、特別な機能というわけではないですが、一応知っておくと便利かもしれません。
最悪、「HDMIのケーブルを忘れた!」という場合にも、板タブのような使用法で絵が描けます。
②Type-Cのケーブル(別売り)一本のみでパソコンに接続する
人によってはこの方法が配線がスマートになりおすすめです。
ただ、安定動作をする条件が細かく(パソコン側のType-C端子がUSB3.1とDP1.2に対応している必要がある)、スペック上は条件を満たしていても、パソコン側のバスパワーに実は問題があったりすると正常に動作をしない可能性もありえます。
メーカー製パソコンのType-C端子の中にも『USB3.1だけど、DP1.2には対応していない』というものもあるので、手持ちのパソコンの仕様を正しく理解している必要があります。
また、別売りの『USB3.1とDP1.2に対応しているType-Cケーブル』を自分で探す必要があります。
DPはDisplayPort(ビデオ出力の一つ)の略で、Type-C規格における『AlternateMode(オルタネートモード:代替モード)』としてサポートしている出力の一つでもあります。
この機能に対応しているケーブル+対応しているパソコン側の端子を使用しないと、液タブに映像が表示されません。
Amazonなどのサイトで『AlternateMode』や『映像出力』などの単語を頼りにケーブルを探すと良いです。
接続するパソコン側の性能にも注意が必要です。
パソコンによっては『複数のType-C端子が搭載されているのに、AlternateModeに対応している端子は一つだけ』という場合や『そもそも対応する端子が無かった』という状況もあります。
パソコンに液タブを挿して「画面が映らない!」という状況になるのも大体は『AlternateMode』か『電力供給不足』が原因です。
そのため、実際に試して動かなかった場合には「パソコンのスペック面での原因か?」「ケーブルの相性が原因か?」などの問題の切り分けも自分でする必要があります。
パソコンに詳しくないという方は、無難に①での接続方法をおすすめします。
ただ、持ち運びを考えると、ケーブル一本で利用できることは強みなため、可能であればチャレンジしてみる価値はあります。
上記のような接続条件は、今回のPD1220以外のあらゆる液晶タブレットでも共通する注意点ですので、「この機種は無理そうなら、別の機種にしよう」ということをしても意味はありません。
③付属のケーブル2種を使ってAndroid端末に接続する
接続方法が3パターンと言いましたが、3つ目の接続方法はAndroid端末向けの方法です。
Androidと接続をする際にも別途『Type-C – Type-C』のUSBケーブルを用意する必要があります。
接続する際のケーブルは説明書内では特別な指定はされていません。
ただ、必要なケーブルは②のパソコンと接続するときと同様に『Type-C端子がUSB3.1とDP1.2に対応している必要がある』と考えるべきです。
私の家にあるType-Cのケーブルを複数試してみましたが、大体半分ぐらいは利用できました。
一度は手持ちのケーブルで試してみて、それで無理であれば対応ケーブルを購入すると良いかもしれません。
液タブへの電源として使用するケーブルは、付属品のケーブルを流用するだけでも問題ないですが、形状がやや特殊なため持ち運びには少々かさばります。
実際に他のケーブルを試してみましたが、別途5V/2Aに耐えうるケーブルで問題ありませんでした。
※念のための補足ですが、色々なケーブルを試す際はあくまで自己責任で行いましょう。
使用準備について(Windows PC編)※以下の情報は2021年4月24日時点のものです)
パソコンで使用する際、まずは公式サイトよりドライバ(液晶タブレットをパソコンで使うためのアプリ)を入手し、インストールする必要があります。
GAOMONの公式ページで『サポート』→『ドライバのダウンロード』から、後はフィルタリングで検索をしていくと、『PD1220&PD1320 Gaomon_Windows_Driver_16.0.0.20』というものが出てきます。
このファイルをダウンロードしてパソコンにインストールをすれば、後はPD1220をパソコンに接続することで液タブとして絵を描くことは可能です。
ただ実際に絵を描く前には、一度インストールした公式ツールの設定を確認してみましょう。
▼公式のツールを起動するとこのような設定画面が表示されます。
この画面を活用することで、ペンの操作に関する設定ができます。
ペンのグリップ部に存在する2つのボタンについては、左側のペンの画像上のボタンにカーソルを合わせて機能の変更も可能です。
右側の設定では、筆圧の掛かり具合を調整したり、設定した筆圧の動作確認が可能です。
▼また、上記の設定はアプリ毎に変更も可能です。画面右上にある『すべてのプログラム』という文字の部分をクリックすることで、アプリ個別の設定ができます
▼設定アプリの左側にあるディスプレイのようなマークを押すと、このような画面が出ます。
ここでは、液タブでの作業領域を設定可能です。基本的に液タブ自体の表示に対して『全ての領域』という設定をすれば問題ありません。
選択式と思われる設定のボタンが、何故か両方選択されているような表示になっています。この辺りの表示は設定アプリのバグだと思うので、早めに修正版が出ればと思います(2021年4月24日時点)。
右下にある『画面キャリブレーション』を押すことで、ペンが認識する座標の調整が可能です。
▼このような画面が表示されるので、画面の指示に従って調整しましょう
ただ、一度は調整せずに使ってみるのも良いと思います。人によっては初期状態でも問題無いと感じるはずです。
PD1220をより快適に使用する為に必要なもの
PD1220を使ってパソコンで快適にお絵描きをする場合におすすめのものがあります。それは『左手デバイス』です。
既にパソコンで絵を描いている方は、ご存じかと思います。
左手デバイスとは『戻る』や『消しゴム』『ペン』の切り替えや、『拡大』『縮小』などの機能をショートカットキーとして登録し、左手で操作するものを指します。
左手デバイスとして代表的なものとしては『TABMATE』が挙げられます。
あとはPCに接続可能なテンキーや、ゲームのコントローラーにキーを割り当てて左手デバイス代わりに利用する方法もあります。ただ、必ずしも左手デバイスが必要というわけではありません。
配置スペースさえ問題なければ、通常のキーボード操作でもOKです。
ただ、一つ言えることは、「パソコンで快適に絵を描くためには、何かしら液タブ以外の入力デバイスの操作は必要」ということです。
自分に合った入力デバイスを活用しましょう。
実際に描いてみる(Android編 LayerPaint HD)
Androidスマートフォンに接続し、実際に絵を描いてみました。今回利用したスマホは『Galaxy note 9』です。SoCはSnapdragon 845の機種です。
日本での発売日が2018年10月ですが、今の基準でもハイスペック系に類するものです。これぐらいのCPUからであれば、比較的快適に絵が描けると思います。
▼サイズが小さめという事を活かすために、今回はモニターアームも活用しています。
『エルゴトロン LX デスクマウント モニターアーム』に取り外し可能な台を装着しています。
▼サイズが小さい為、このように余裕を持って配置が出来ます。
▼実際にスマホを横において使ってみます。
Samsung系で液タブに対応しているスマホは『DEX』と呼ばれる「スマホにディスプレイを繋いでパソコンっぽく使える機能」が備わっています。
DEX機能を使うことで、液タブでお絵描きをしつつ、スマホの画面をタッチパッドのように使うことが可能です。
左のスマホの画面を二本の指でピンチイン・ピンチアウトすることにより、キャンバスの拡大縮小やキャンバスの回転・移動が可能になります
別途bluetoothのマルチメディアリモコンを用意することで、Android系のお絵描きアプリでよくある機能『音量の上げ下げで、戻る・やり直すを操作』を素早く行うことが可能です。
今回使うAndroidアプリ『LayerPaint HD』でも、今紹介したような操作が可能で、しかもマシンスペックをあまり要求しない点が魅力です。
Androidで絵を描く場合は、とりあえず一度は『LayerPaint HD』を使ってみましょう。それぐらいにはおススメできるアプリです。
▼液タブを使う場合の主要な設定はこんな感じ。
シングルタッチを無効化してしまうと、液タブが反応しない点は注意です。これはPD1220に限らず、Androidで液タブを利用する際にも注意すべき点となっています。
ということで描いていきます。
▼パソコンっぽい画面に見えますが、これはGalaxy note9 をPD1220に繋いでDEXモードで動作している画面です。
実際の使用状況を想定しながら使ってみます。
・お絵描きアプリ
・絵を描く参考に、自分でスマホカメラを使って取った写真
・音楽配信サービスで音楽の再生
・作業をしながらスマホゲームを裏でオート放置
という、アプリの多重起動をしています。
PD1220は『液タブのサイズの中では小さめの部類』とはいえ、スマホに比べれば遥かに大画面です。
スマホでお絵描きをしたことがある方であれば、お絵描きツールを窓の形にした状態でもスマホでのお絵描きに比べて格段に描きやすくなります。Androidで使用する場合、基本的にはポインタのキャリブレーション(ポインタ位置調整)ができません。そのため、液タブとしての純粋な座標精度が求められます。
▼以下の画像を見ると分かるように、画面中央付近での座標精度が高いです。
基本的に絵を描く際は画面の中央近辺を使うことが多いので、描き心地の精度も良い印象をうけました。
▼反面、画面端付近では画像のようなズレが生じます。
特にAndroidで描く場合には、ホバー時のカーソルが表示されないため、画面端から描き始めるのは少々つらい印象です。
ただ、このズレは他の同価格帯の液タブでもあるズレなのと、公式スペックの表す、『±0.5mm (Center) ~±3mm(Corner)』から考えると妥当といえます。
▼と、そんなことを思いつつ、お絵描きアプリを小窓のまま線画っぽい状態まで描くことが出来ました。
画面が小さい分、腕のストロークをあまり使わなくて良いため、腕自体も疲れにくいと思います。
また、レイヤーやレイヤー用のフォルダ名を変更するときなどのキーボード操作もペンで入力が可能です。
▼このように液タブ上にキーボードを出すことが出来ます
ソフトウェアキーボードのサイズは横の長さが液タブ画面に対して4分の1ぐらいです。
設定によっては『文字入力はスマホの画面を使う』という方法や、『Bluetoothのキーボードを使う』などの方法もあるので、好みで使い方は決めると良いです。
次は線画を塗っていきます。
あのままのサイズでも出来なくは無かったですが、塗りは全画面を活用しないと勿体ないので、音楽再生のアプリ以外は切りました。
▼逆を言えば全画面表示にさえすれば作業領域的には問題無いと思います。
髪を塗ろうとし始めたところで気になった点がありました。ペンの『抜き』がどうしても綺麗に描けませんでした。
▼髪の毛の先を一筆でサッっと塗ろうとするものの相当力加減が難しいです。
▼ただ、今回使用しているAndroidアプリ『LayerPaint HD』には筆圧調整の設定があります。
筆圧調整の設定を活用し、ペンの最低筆圧近辺の反応を少し鈍くなるように設定しました。
▼設定後に改めて塗るとこんな感じに。
ペンの『抜き』が綺麗にできていることが分かります。
キャリブレーション設定に比べ筆圧設定については可能なAndroidアプリも多いので、ぜひ設定を活用しましょう。
▼ということでペンの抜きさえ設定ができれば、あとは大きな問題はありませんでした。
作業の間はずっとスマホから流している音楽を、液タブのイヤホンジャックから聞きながら作業ができて快適でした。
・PD1220とペン
・スマホ
・接続用のケーブル2本とアダプタ
これらさえあれば、電源のある場所でどこでもお絵描きが可能だと再認識できました。液タブの色合いについてはあらかじめパソコンの画面などと見比べて色の調整しておけばより良いです。
作業後にパソコンのディスプレイで見比べても色合いに違和感がありませんでした。高性能な色域の恩恵もしっかり得られています。
あえて問題を挙げるとすれば、液タブというよりもAndroid端末のスペックだと思います。今回使用したAndroidスマホは高性能なので、線画を描くところまでは大きな不自由は無かったです。
しかし、色を塗る際のエアブラシについては、アプリ側の線補正機能を使用すると、Androidの性能上極端に動作が重くなります。
『色を塗るときだけは補正を切るor補正を弱める』と問題無かったのですが、使用するスマホのスペックによってはさらなる対策(スマホ側の解像度を下げるなど)が必要だと思います。
PD1220とは関係の無い『LayerPaint HD』側の余談
▼アプリの窓のサイズを変更したり、スリープ復帰後、作業中の内容を保存した時にこのような文字が出た場合は要注意です。
データ保存時に上記の文字(『SaveMDP Failed』)が出ているときは、作業データが正常に保存できていません。
こういった場合は、アプリ機能の『別名で保存』をすることでまたファイルが保存可能になります。
保存が正常にできているかは、アプリ機能の『開く』から、データが正常に保存されているか(更新時間が今になっているか)を確認しておくとより良いです。
実際に描いてみる(Windows10編 clip studio EX)
今度はパソコンでも実際に描いてみます。
▼まず、手ブレ補正を無しにして、定規をあててゆっくり(1本あたり5秒ぐらいかけて)線を引いてみました。
ジッター(線のブレ)は全く無いとはいえません。ただ、お絵描きをする上では問題無く描けるレベルです。実際、手ブレ補正を0にしている方は少ないと思います。
▼気になる点があるとすれば画面下の箇所でしょうか。一部線がブレ気味な場所がありました
ただ、画面のかなり端の部分であることと、手ブレ補正を掛けていれば補正できる範囲だと思います。この辺りの挙動を気にしだすと、価格が倍以上の高級で大型な液タブを視野に入れないと駄目です。
▼細かめな拡大率での描画に耐えられるかのテストをしてみました。一番左を手本として画面にレイヤーで薄く置き、その上からなぞっていきます。
左から2番目~4番目は、上記の画像の拡大率(実寸1円以下のサイズ)で描きました。
▼一番右だけ、拡大率を上げて(10円よりも一回り大きいぐらい)描いています。
▼結果がこんな感じです。
流石に細かすぎたので、手ブレ補正無しだとやや線が波打ちますが、補正を上げていくと安定していきます。
clip studioの手ブレ補正の上限は100なので、もう少し強めに手ブレ補正を掛けると、細かめの拡大率でも描くことが可能です。
「手ブレ補正を掛けたら、問題無く描けるのは当然では?」と思う方が居るかもしれません。
しかし、私が過去に使用したことのある大きめの液タブでは「手ブレ補正を掛けても、細かな描きこみは絶対無理」というぐらいにブレが酷いものもありました。
パソコンよりも細かな設定ができないAndroidでも問題無く描けていたことからも、PD1220はパソコンで使う分にも問題無いです。
▼Androidで描いた線画をパソコンに移動し、改めて上から描いてみました。
パソコンで使用できるアプリの性能も相まって、控えめな拡大率で描くことができました。
よく、「液タブのサイズが小さいと作業領域が狭くなるので、液タブは大きいに越したことはない」という話があります
確かに、読取解像度(LPI)はざっくりと言うと『1inch当たりの読取密度』のようなものなので、液タブが大きくなれば、それだけ液タブの解像度当たりの読取箇所が増えます。
そういう数値的な性能で見れば『大きいに越したことはない』という考え方は正しいです。
ただ、実際に使ってみると、予想していた以上に「拡大しなくても描ける」と感じました。
15~16インチの液タブと比較すると、11.6インチでは手ブレ補正を少し強めに掛けると線が綺麗に描ける印象です。
人によっては、むしろ「画面サイズが小さい分、全体が見やすくて描きやすい」と感じると思います。
パソコンでは、キーボード操作・マウス操作・各種左手デバイスなどもフルに活用できるため、操作面でも問題ありません。
持ち運びや普段の置く場所をとらない点も考えると、選択肢としては十分にアリだと思います。
ここから先は、実際に使ってみて気付いたことなどをまとめていきます。
少ない筆圧でも反応するので疲れにくい
色々な液タブ、板タブをこれまでに使用してきましたが、その中でも「軽い筆圧で描くことができる」部類のものだと思います。
長時間の使用であっても疲れる事は少ないと思います。
若干入りと抜きの筆圧感度が良すぎて制御が困難と感じましたが、筆圧設定で上手く調整すれば問題ないレベルです。
PD1220を使った後に他の液タブを使ってみると「あれ? こんなにペン硬かったかな?」と感じました。
絵の描き心地は良い
PD1220は、私がこれまでに使ってきた他社液タブに比べ、やや特徴的な挙動をしていることが分かりました。
あくまで私が実際に使用して感じたことですが、『ペンで画面をタッチする前(ホバー中)のペン座標』と『実際にペン先が画面に触れた以降の、描画中のペン座標』の挙動が異なります。
『ホバー中のペン座標は絶対座標』で、ペン先が画面に接触してから先のペン座標は『画面をタッチした時点の座標を基準とした相対座標』で動作をしているように感じました。
……上記の説明だけではまだピンとこない方が多いと思いますので、もう少し具体的に説明していこうと思います。
まず、『GAOMON PD1220』を使ってペン先で画面をタッチする際のペン座標の精度、言い換えると『ホバー中(ペンが画面に近づいて液タブ側が座標だけ反応している状況)』の座標精度は、マニュアルやクローバルの公式HPに記載されているように、『±0.5mm (Center) ~±3mm(Corner)』という記載があります。
この表記は「液晶タブレットの中心でも±0.5mmのポインタ誤差、端の方に行くと最大で±3.0mmの誤差がある」ということを表しています。
実際に使用してみると、確かにホバー時のポインタの精度は表記通りの誤差が発生していました。
しかし、実際にペンを画面に当て描画を始めると、ホバー中に比べて明らかにペンのポインタ精度が向上したような挙動をします。その為、細かな描きこみについても、ストレス無く描くことが可能になっていると感じました。
実際のペンの座標処理の原理がどのように行われているのかは、技術的な原理が分からないため、あくまで予想の範囲を超えません。
しかし、少なくとも体感として「細かな描きこみがしやすい」と感じた点については事実です。
現状で私は『Wacom Cintiq 16』を使っているのですが、PD1220についても「細かなペン操作でも絵が描ける」と判断しました
ポインタが大きくずれてしまうケースと対処法 (2021年5月8日時点)
一部条件下では画面中央付近で描こうとしても、ポインタがペン先から大きくずれてしまう場合があります。それは『画面の端の方をペンで押した後』です。
言い換えると『ポインタがペン先からズレたような状況でペンを押した後、ホバー状態を保ったまま画面の中心で描画をしようとすると、画面端でのポインタのズレ幅をそのまま引き継ぐ場合がある』という事になります。
上記のような状況を回避する方法は『ポインタがペン先から大きくズレた状態での操作をした後は、一度画面からペンを離してポインタを完全に消す』です。
この事を少し意識しておくだけでも快適さが増します。ただ、人によっては気になってしまう挙動かもしれないので、今後のドライバー更新などで改善されることを期待します。
長時間作業にも快適
PD1220を使っていて、「長時間作業をする場合にも適している」と感じました。
11.6インチというサイズに対してのFULL HD(1920×1080)なので、他の大型液タブに比べるとドット感が感じにくく、作業の妨げになりにくいです。
以前までは、私はFULL HDの20インチなどでもドットが気にならなかったです。
ただ、最近はスマートフォンの進化により『小型で高解像度な画面』を近くで見慣れてしまいました(ちなみに、『iPhone12』の解像度は6.1インチで1170 x 2532です)。
そのため、昔は全く気にしていなかった液タブの解像度も、最近だと「ちょっとドットの粒粒感が気になるな……」と感じていました。
しかし、今回のPD1220は画面サイズあたりの解像度も十分で、かつ色域も問題無かったのが良い印象を得ました。
また、長時間の作業で目が疲れて来たと感じたら、本体左側のスイッチで明るさを下げたり、色合いを簡単に調節可能なので便利でした。
安価な価格の液タブを快適に利用するためのコツ
PD1220というよりは、PD1220を含む一般的な『安価な液タブを使用する際のコツ』について説明をします。
物理的なペン先では無くポインタを見て描く
液タブは『液晶ディスレイに直接ペン先を当てて描画が出来る』事が一番の売りです。
しかし、実際に販売されているパソコン向け液タブの多くは、大小の差はあれど『ペン先とポインタのズレが発生する液タブは結構ある』というのが現在の液タブの実情です。
描き心地に関する内容で触れたように、PD1220についても類に漏れず、ポインタの位置自体はペン先に対して少しずれることがあります。
設定アプリを用いたキャリブレーション(位置調整)を行ったとしても、『±0.5mm (Center) ~±3mm(Corner)』というポインタの位置ズレは発生します。
その為、液タブを利用する場合には、握っているペン先を見るというよりも『液晶側に表示されているポインタ側を見て描く』という気持ちで使用すると非常に描きやすくなります。
ポインタの位置を調整する『キャリブレーション』を行うときにも、ペン先の真下にポインタが来るように調整するよりは、むしろ『ポインタがペン先で隠れないような位置』に調整することを意識すると良いです。
例えば右利きの人の場合は、ペン先よりも気持ち左上ぐらいに調整すると、ペン先からポインタの位置が多少ズレたとしても、ペン先の右側にポインタが隠れてしまうことを防ぐことができます。
ただ、この辺りも最終的には好みの問題になります。実際に使ってみて、自分に適した設定を模索していきましょう。
その他の用途にも便利
液タブというと『お絵描きのためのもの』というイメージが強いですが、PD1220はそれ以外の用途にも適しています。
Mini HDMI端子とイヤホンジャックを活用することで、お絵描きをしていないときにも便利に使うことができます。
娯楽用にフル活用する
▼PD1220に対応しているスマホと接続できるので、お絵描き以外のいろんなアプリを同時に使用することができます。
例えば『ゲーム』『SNS』『動画再生』をひとつのスマホで同時に起動させ「動画を流しながら片手間でゲームしつつ、SNSでやりとり」といったことも可能です。
PD1220は『コンパクト』『高色域(画質が綺麗)』『イヤホン端子と音量調整がある』ため、純粋な娯楽用途に対する適正も高いです。
絵を描きながら別の事にも利用できたのですから、いっそ絵とは関係のない事だけに集中して使うのもアリです。
最近の新しい液タブ対応機種のスマホであれば、性能面でも問題無いと思います。
Nintendo Switchの画面として使う
▼Type-Cの接続を利用して、Nintendo Switchを大画面で楽しむことも可能です。
画質が綺麗であり、イヤホン端子もあることから手軽さが増します。
ただ、注意があるとすれば、イヤホン端子からの音量がかなり大きめな場合があるため、耳にイヤホンを入れる前にPD1220の音量をギリギリまで下げ、実際に音が鳴っているのを確かめてから使用しましょう。
イヤホンはSwitchの本体側に挿しても利用可能ですが、配線の取り回し的にも液タブ側のイヤホン端子の方が便利な事が多いです。
PD1220であればSwitchの公式ドックを使ってHDMIで液タブに映像を入力することも可能です。
テレワーク用のサブディスプレイとしても使える
最近では、テレワークをしている方も多いです。そういった方が使うサブディスプレイとしても便利です。
PD1220はMini-HDMI端子があります。
「テレワーク用に液タブを活用したいけど、テレワーク用のパソコンに勝手に液タブのドライバとか入れられないし、仕事用のパソコンにUSBで認識させるのも怖いな……」という方も安心です。
HDMI端子でテレワーク用のノートパソコンと接続すれば、純粋なサブディスプレイとしても簡単に利用できます。
液タブとしての操作ができればより便利ですが、HDMI接続でテレワーク時の作業領域を手軽に拡張可能な点も良いと思います。
サイズ的に小型のノートパソコンとあまり変わらないのも、並べて使う際に便利です。
最後に
PD1220は『軽い描き心地と高色域による綺麗な画質』、『接続するケーブルの融通が利きやすい点』、『Mini HDMI端子の便利さ』もあり、お絵描き用途だけでなく多目的に活躍する液タブだと感じました。
サイズもコンパクトなため、デスクスペースに余裕が無い方にもおすすめです。
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